中小企業の賃金上昇0.3%、最賃引き上げに厳しい数値

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 今年の最低賃金の引き上げ幅の目安を議論する厚生労働省の中央審議会の会合が1日開かれ、中小・零細企業の今年の賃金上昇率が0・3%だったというデータが公表された。コロナ禍が響き、前年の1・2%から0・9ポイント減った。政府と労働者側は最低賃金の引き上げを目指しているが、厳しい数値が示され、経営者側の反発が強まりそうだ。

 業種別では、製造業の上昇率が前年の0・9%から今年は1・0%に伸びた。一方、宿泊・飲食サービス業は前年が2・3%、生活関連サービス・娯楽業は1・2%だったが、いずれも今年は賃金が伸びなかった。

 賃金上昇率は、厚労省が従業員30人未満の全国約1万6千事業所について、6月時点の見込み賃金を1年前と比べて算出した。例年、最低賃金の引き上げ幅の目安を決める参考データとして示される。前年までの過去5年は、1・1~1・4%で推移していた。

 かつては賃金上昇率に沿って引き上げ幅の目安が示されることが多かったが、最近は、様相が変化。2016年以降は安倍晋三・前政権の意向に引っ張られる形で、中央審議会は賃金上昇率より高い「3%」の引き上げ幅の目安を提示。コロナ禍を受けて、政府が雇用優先を掲げた前年の目安は「現状維持」だった。

 今年は、最低賃金引き上げにこだわる菅義偉首相の意向も受け、政府がコロナ禍前の引き上げペースへの回帰をめざしている。だが、中小企業を中心に経営側が反発を強めている。(山本恭介)

コメントプラス
  • 澤路毅彦
    朝日新聞編集委員=労働
    2021年07月02日13時48分 投稿

    【解説】 最低賃金の引き上げ額について審議する中央最低賃金審議会では毎年、小規模事業所の春の賃金引き上げ状況を調査した結果が報告されます。記事に出てくる0.3%という数字は、この調査結果のうち、「第4表」に出てくる数字です。最賃の審議では、しばしば「4表」と呼ばれ、業種やA~Dランク別のデータもあります。今年の場合、Bランクはマイナスになっています。 かつての最賃審議では、この4表の数字が決定的だったそうですが、法改正やここ数年の政治主導の引き上げで、4表の持つ意味は変わってきています。ただし、経営者側が4表通りの引き上げを主張することは変わっていません。 今年の4表の数字が低いのは、昨年の最賃の引き上げ状況が影響している可能性もありますが、引き上げに対する経営者側の態度はますます厳しいものになるでしょう。…続きを読む

  • 志村亮
    朝日新聞東京経済部次長=企業、労働
    2021年07月01日20時40分 投稿

    【解説】 こまかくみると、最低賃金引き上げの目安は47都道府県をA~Dの四つのグループにわけて示されます。 例えば、今年の宿泊・飲食サービスの賃金上昇率は全体でならすとゼロ%でしたが、東京、神奈川、大阪、愛知といったAの地域では0.3%マイナス、栃木、静岡、京都、兵庫といったBの地域では0.7%プラスとグループによって違いがありました。 したがって、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返されてコロナ禍の影響が大きかったグループでは引き上げ幅を小さく、それほど大きくなかったグループでは引き上げ幅を大きく、という議論もありえます。 最低賃金は、都道府県によって792円から1013円まで開きがあり、この差を縮めることが課題の一つとされています。この点を意識して中央審議会がどんな結論を下すかにも注目です。…続きを読む